拝啓、雨宮まみ様⑵

東京は気温差が激しくも、夏が近付いて来たのだなという気温が続いています。其方では如何お過ごしでしょうか。

まみさんが亡くなって半年経ってしまったようです。半年ってなんだかあっという間でしたね。

 

まみさんの訃報を聞いた日は木曜日でした。わたしは木曜日が定休で、夜まみさんが亡くなったことを知って泣きながらシャワーを浴びました。シャワーを浴びながら泣く利点は「音」です。シャワーの音が泣き声を曖昧なものとする。毎日湯船に浸かるわたしですが、その日はシャワーだけにしたのです。

 

翌日は訪問診療の予定が入っていて、ドクターと患者さんの御自宅に伺いました。その日はとてもよく晴れていて、気持ちの良い日でした。でもわたしの頭の中はまみさんのことでいっぱいで「こんなに空は晴れているのにまみさんはもう居なくて、それでも世界は変わらずに回っていて、こんなのおかしい」そう本気で思いました。浮かぶのはまみさんの笑顔だけでした。

 

週末に高校の頃からの友人と食事の予定が入っていました。わたしは正直気が進みませんでした。目の前にある「生」がまみさんの「死」を浮き彫りにしたからです。自分でも酷い人間だなと思います。でも本当にそればっかり思っていたんですよ。まみさんの死が受け入れられなくて、周りの「生」に感情を燃やすなんて、みっともないですよね。でもあの頃はそれで保っていたんです。なんとか、これ以上落ちないようにと、それで保っていたのです。

 

暫く経って思いました。まみさんが亡くなってしまっても、まみさんの言葉はずっとあって、だからまみさんは死んでしまったけれど死んではいなくて。まみさんの想いや魂はまだここにあって、この時間の中にあって、それはきっと永遠にあるのだとわたしは気付きました。わたしがいつか死んでも雨宮まみが残した言葉は永遠にあり続ける。そしてその言葉たちはわたしにとって御守りのようなものになっていました。わたしはまみさんの言葉と生きると強く思ったのです。辛いことがあっても、女を拗らせてしまったときでも、わたしには雨宮まみの言葉があるのだと思うと、また立ち上がれる気がしました。

 

上司にあたるドクターの1人にこの間夏は帰るのかと聞かれました。今年は丸々1週間帰るつもりでいるので、その旨を伝えました。わたしの実家は青森県内で、一番近くのコンビニは徒歩30分という田舎です。そんなところだからなのでしょう。上司に「帰って何をするのか」と聞かれました。わたしは帰省する際は帰ったらまず御仏壇に手を合わせてお墓参りに行きます。大好きな祖父母に帰って来ましたよと告げにいくのです。もう数年程帰っておらず、そろそろお墓参りに行きたいというのが今年の帰省の理由でしたのでそう言うと「俺はそういうの信じてないからなあ」と言われました。信じているか信じていないかと聞かれればわたしは信じてはいません。これはただのわたしの願望なのです。まだわたしのところにいてほしい、覚えていてほしい、そして何よりもわたしが絶対に忘れたくないのだという我儘な願いなのです。

 

わたしがまみさんの言葉を繰り返し読み、SNSでこの言葉が良いとか、人様にまみさんの言葉を紹介するのは、わたしがまだまみさんを感じていたいからで、まみさんを覚えていたくて、雨宮まみという存在をわたしの中で少しも小さくしたくなくて、何よりも雨宮まみが大好きで大好きで。だからただの、わたしの願望で我儘なんです。まみさんが大好きで生きていて欲しくて、でもそれはもう無理な話で。それでもまだわたしはあなたと生きることを分かち合いたかった。あなたが見た世界をわたしも見たかった。わたしの光であって欲しかった。そしてそれを今でも望んでいるからおかしな話ですよね。

 

わたしは40歳がくる!が一番好きです。中でも下記の文章が好きです。

 

先輩だからって、いつも正しいことなんか言えない。自分だってまだ正しいことなんて何なのかわからないのに、他人にとって何がいいのかなんてわかるはずがない。人生経験が10年20年あるからって、そんなのどうでもいいことだ。時間だけじゃなくて濃度の問題もあるし、みんな誰でも、自分の経験してきたこと、自分の考えてきたことしか知ることはできない。先輩後輩なんて、本当はない。 私の知らないことを、他人は知っている。そして自分は、自分に関することしか、最後まで知ることはできないのだ。

 

本当にそうなのだと思います。わたしはいつかまみさんの年齢を超えるでしょう。まみさんのような素敵な人になれるでしょうか。誰かを包みこみ、時には肩を並べてお酒を飲んで話を聞いたり、東京なめてんの?なんて言ったり。なれたらいいなあ。

 

今年のまみさんの命日は水曜日ですね。水曜日は休めないので翌日は、いや水曜の夜からバカみたいにお酒を飲んで、二日酔いで目覚めてこれ着て外出るの?!みたいな服を着て、薔薇の花束なんか買ってアテもなくどこかに向かって、買った花束をあなたがいる空に向かって投げたい。

 

 

雨宮まみは永遠だ。