映画「3月のライオン」

3月のライオン後編観てきた。この作品は実際の上映時間の倍くらいに感じてしまう不思議さがある。たくさん泣いて、でもあったかくて、最後は前を向けて、エンドロールでまた込み上げるものがあって。ありがとうありがとう。凄く凄く大事な作品になった。血の繋がりがなくても、愛は確かにあった。


前編に関しての感想はあげてなかったので、印象的に感じたところを一つだけ。

それは「生きるために将棋が好きだと言った。将棋しかなかった」という桐山くんの台詞や思い。結果、彼は実力を上げ中学生でプロ棋士となったが、家族という形は崩壊していく。幸田家と桐山くん、香子とお父さんなどなど。
幼い子どもが、生きるために選択せざるを得なかったというのは、適切な言葉かはわからないが非常に悲しいものだと思う。
「将棋しかねえんだよ…」
という台詞に全てが込められていた。彼の気持ちが少し分かってしまった。わたしは生きるために仕事をしているから。辞めたら、間が空いてしまったらお金はないし、親は年金暮らしでそもそも専業主婦だったし、過去働いたことがあるのか謎なくらいだ。頼れる親戚はいないというよりも、それぞれ皆家庭がある中、頼れる訳もないというのが本音だ。
19歳のとき家計を支えていた祖父がなくなり、専門学校の授業料は出せるが、生活費は出せないからなんとかしてほしい、そう言われた。奨学金の金額をMAXまで上げ、バイトは入れるだけ入って(と言っても多くて月5万くらいしか稼げない)なんとかやっていく。バイトも変えればいいじゃん、と思われそうだが簡単に言えば人手不足だったこともあり、辞めて次のバイトまで間が空いてしまったら困るので続けた。
そんな生活をして、学校は卒業し、就職するも有休は勝手に消化され、ミスが多いから来月から給料2万減らすからと突然言われ、上司の当たりは強くなり、ミスすれば物は投げられ、渡すときもぶん取られ。お局にもいちゃもんつけられて。こんなところ潰れればいいのにって思いながらも雇用保険継続のために堪えて「明日で辞めさせてください」で辞めた。もちろん次の就職先を見つけてから。
生きるって簡単じゃないし、生きるために堪え抜いて、生きるために仕事をしているわたしには桐山くんの気持ちが少しだけ分かったのだ。だから彼の口から、涙しながら「将棋しかねえんだよ…」と出てしまった時は思わず泣いてしまった。

話は少しずれてしまうが、生きるって凄く大変なことだ。生活のために働いて、ご飯を食べて、睡眠もとって、お風呂もちゃんと入って。最低限をクリアするだけでも、とてもとても大変なことだから。その上、人さまと関わりを持たなければいけないし、気苦労なんかもあったりして。本当は生きているだけでも凄いことなのだと、一人一人自分を褒めてほしいとわたしは思う。

映画の話に戻る。沢山の思いを抱えて生きている彼に転機があり、人との出会いやコミュニケーションを通して少しずつ変わっていく。将棋に向かう姿勢にも。

前編ももっと見どころはあるのだが、この辺にして愛の後編の感想を。


時系列はバラバラだが、印象に残ったところを幾つか挙げていきたいと思う。

終盤の、強くありたいって思って動いても、誰かを傷付ける結果だったり、ただの独りよがりだったっていうことに気付いたんだと桐山くんが話すシーン。わたしもそういう経験があるので桐山くんに自分を重ねてしまった。ここはもうただ、ただ静かに泣いていた。桐山くんはそれに気付けて、ちゃんと謝りにいって、貰っていたのは自分だったんだってきちんと自分の言葉にして伝えて。偉いなと思った。立派な子だ。また気付いてからの彼の表情や佇まいにやっぱり変化は出ていて、前を向いていた。以前よりもずっと。自分が今できることを、ただひたすらにやろうという意思が現れていた。

個人的に香子が「なんで負けたか分かる?あたしを大事にしないからだよ」ってというシーンは凄く好きだ。それに、正直それは言えてると思った。理由は分からないが、ただそう思う、と思ったのだ。ここ、香子に同感した人きっといるはず…!

後藤さんとの決勝戦はわたしも泣いてしまった。桐山くんのあの姿を見ているのが辛いのと、後藤さんも奥様を亡くされて将棋に集中できるって言っていたけれど、やっぱり心の奥底では、なんて思ってしまったり。2人の対局するその姿が何だか苦しくて泣いていた。

あとは、あかりちゃんが「親を殴るなんてどうかしてるわよね?でもこれで家族の縁を切れるなら何度だってあなたを殴ります」って言い切ったのは恰好良かった。19歳で2人のお母さんになって、守ってきた彼女の強さをただひたすらに感じた。1人じゃないけど、時に1人だとどうしようもなく孤独を感じたこともあったのだろうと思うと、ぐっとくるものがあるし、あかりちゃんの台詞や目に強さが感じられた。あかりちゃんにビールで乾杯したくなった。

幸田さんが「香子の一手を応援している」ってところも泣いてしまいまったな。


後編は結構泣いていた気がする。苦しくとも愛が溢れていて、愛の後編というサブタイトルが本当にぴったりだった。有休の日に朝から3月のライオンを映画館の大きなスクリーンで観れて本当に良かった。
そして心から良かったなあと思い、大好きな椿屋四重奏のマテリアルが聴きたくなって再生したら、空が青くてとても澄んでいて、それだけなのに、それだけなのに何故か凄く幸せなことに思えて歩きながら泣きそうになった。この命はただ消耗するのではなくて、返したいって強く思ったのだ。わたしが生きてきた感謝の想いと共に返して生きたい、と。

2017年の2度と来ないこの春の日に3月のライオンを観れたこととても嬉しく思う。円盤が出た時ではなく、この春の季節に観れたことにきっと意味がある。